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中小企業診断士(令和3年)の2次筆記の事例III(生産・技術)の解説

令和3年に出題された中小企業診断士の2次筆記の事例IIIの問題について、自分なりに解説していきます。

過去問はこちらで公開されています(2次試験は下の方にあります)。解答例はありませんでしたが、他のサイトや各出版社の問題集に載っています。

www.jf-cmca.jp

問題文の整理

革製のバッグを製造販売するC社が、自社ブランド製品の販売拡大を検討する話です。

以下、段落ごとに要点を整理していきます。

【企業概要】第1段落(C社の概要1)

  • C社は革製のメンズ及びレディースバッグを製造、販売している。
  • 従業員の8割は製造部門。

第2段落(C社の概要2)

  • 元々はバッグメーカーX社の縫製加工の一部を請け負う下請け業社だった。
  • その後、X社が企画・デザインした製品の一括受託生産を担うようになった。生産量も増大した。
  • その後、X社から発注が減ったため、他のバッグメーカーと取引するようになった。
  • 受注量は多いが、低価格品が主となっている。

第3段落(自社ブランド生産開始)

  • (3-1) C社は製品デザイン部門を新設。自社ブランド製品の企画・開発・販売を進めた。
  • (3-2) 手作り感のある高級仕様が注目された。(SWOTのS)
  • (3-3) 高価格品であったが、大量の注文を受けた経験があり、自社ブランド化の推進の契機となった。(SWOTのS)
  • (3-4) C社独自のWebサイト・ECサイトを立ち上げ、自社ブランド製品の販売の中心となっている。
  • (3-5) 自社ブランドはC社売上の20%であるが、収益に貢献している。

【自社ブランド製品と今後の事業戦略】第4段落(自社ブランドの詳細)

  • (4-1) C社の自社ブランド製品は、天然素材のなめし革を材料にして、熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品である。(SWOTのS)
  • (4-2) 自社ブランドのコンセプトは「長く愛着を持って使えるバッグ」。
  • (4-3) 自社で修理も行う。
  • (4-4) 新製品は、ECサイトの販売データを活用している。

第5段落(自社ブランド推進の懸念事項)

  • C社はブランド製品の販売の拡大を検討。
  • 製品デザイン部門には新製品の企画・開発経験が少ないことに不安がある。(SWOTのW)
  • 製造部門の対応に懸念を抱いている。

【生産の現状】第6段落(計画の立案)

  • 生産管理担当者は、注文受付や修理受付の窓口であり、それらの製造・修理の計画の立案や出荷指示を行っている。
  • 生産計画は月1で月末の生産会議で各工程のリーダーに伝達されるが、後から変更が発生することがある。(SWOTのW)

第7段落(小ロット化と多め生産)

  • 受託生産が主であり、1回の受注量は年々小ロット化している。
  • 生産管理担当者は、わざと多めに作って、保管している。

第8段落(自社ブランドは見込み生産)

  • 自社ブランドは、生産管理担当者が受注予測を立てて、見込み生産している。欠品や過剰在庫が生じることがある。

第9段落(受注後の製造工程概要)

  • 裁断、縫製、仕上げ、検品、包装・出荷の5工程。

第10段落(受注後の製造工程1・裁断)

  • (10-1) 裁断は、最も機械化されている工程。(SWOTのS)
  • (10-2) 材料や付属部品の資材発注と在庫管理は裁断工程のリーダーが行う。
  • (10-3) 生産計画に基づき発注するが、リードタイムが1ヶ月を超える場合があり、資材欠品が生じると、生産計画を変更する。(SWOTのW)

第11段落(受注後の製造工程2・縫製)

  • (11-1) 一番多くの熟練職人を6名配置。
  • (11-2) 全体縫製と部分縫製の2つのパートに分かれ、前者は難易度が高い。
  • (11-3) 自社ブランド製品の生産が計画されると、熟練職人は受託生産品よりこちらを優先して作業する。
  • (11-4) 自社ブランド製品を担当した職人が、その後の仕上げ工程も行う。
  • (11-5) 各作業者の作業割り当ては、縫製工程のリーダーが各作業者の熟練度を考慮して決めている。
  • (11-6) 縫製工程は修理も担当しており、C社製造工程中最も負荷が大きく、時間がかかる工程となっている。(ボトルネック)

第12段落(受注後の製造工程3・仕上げ)

  • 縫製工程同様手作業が多く、熟練を要する。

第13段落(若手養成)

  • 縫製・仕上げ両工程では、高齢化した職人の退職が予定されており、若手の養成を行っている。
  • バッグを一人で製品化するための製造全体の技術習熟が進んでいない。(SWOTのW)

第14段落(受注後の製造工程4・検品)

  • 出来栄えのばらつきが発生した場合、手直し作業も担当する。

第15段落(受注後の製造工程5・包装出荷)

  • 完成した製品の包装、在庫管理、出荷業務を担当。

用語解説

特になし 

設問を解く

第1問

革製バッグ業界における、C社の強みと弱みを回答する問題です。

「革製バッグ業界における」という言葉の解釈が難しいです。おそらく同業他社や同業の平均と比較して会社がどのような特徴を持っているかを回答するのだと思われます。

強み

  • 4-1より、高品質な素材を、熟練度の高い職人が加工して、評判の良い高級品のバッグを作れること。

弱み

  • 3-5より、売上の大半が受注生産に依存している点。

第2問

受託生産品の製造工程について、課題と対応策を2つずつ挙げる問題です。自社ブランド生産の方と間違えないようにしましょう。

受託生産品の製造工程に関する話は、第6,7,10,11,12段落にあります。

まずは、第7段落にある、余剰在庫に注目します。これにより、余計な保管費用が発生してしまいます。よって1つ目の課題は、在庫の適正量管理です。小ロット生産に対応した製造工程を実現できるように、設備や作業手順の見直しを行うべきです。

次に10-3の資材発注のリードタイムが生産計画を狂わせていることが問題です。よって2つ目の課題は、タイムリーな資材管理です。より短いリードタイムの発注先を探すか、長いリードタイムに合わせて、資材の管理方法を変えるべきです。

第3問

自社ブランド製品の開発強化を進める上での、製品企画面と生産面の課題を回答する問題です。第5段落で同様の懸念事項が指摘されています。

まずは製品企画面ですが、C社は企画の経験が少ない点が問題です。そこで企画部門を新設し、百貨店などの企画に慣れている人材を採用します。その上でWebサイトのアクセス・購買履歴を分析しながら企画を進めると良いでしょう。

次に生産面ですが、11-3で自社ブランド製品開発が、受託生産に影響を与えてしまうことが問題です。生産ラインや人材を分けて、互いに影響を与えない生産プロセスを確立することが重要です。

第4問

熟練職人の手作りで高級感を出すか、若手職人も含めた分業化と標準化を進めて自社ブランド製品のアイテム数を増やすか、どちらを選び、どのように対応するべきかを回答する問題です。

VRIOフレームワークのInimitability(模倣困難性)をキープする上でも、熟練職人の手作りで高級感を出すべきです。ただし、第13段落に記載されている通り、職人が退職する予定です。若手の養成が急務なため、受託生産品の受注を減らして教育のための時間を捻出したり、教育のために、熟練職人と若手の2人1組で作業に当たらせるなどの対応をすべきです。

解説をしてみた感想

高級品の完全手作業は、AI・ロボットでも代替が難しいイメージがあるので、こういった職人は生き残りやすそうです。